配達子

夕刊に　　梅雨も抱えて　　配達子　　　一水

山恋いし

欅の木　　舗道うねる根　　山恋いし　　　一水

胸響く

潔く　　黒土担ぎ　　胸響く　　　一水

雲霧ふらりと

五月晴れ　　雲霧ふらりと　　何処へ行き　　　一水

鬱飛んだ

梅雨晴れ間　　日本百合咲き　　鬱飛んだ　　　一水

晴れ覗く

晴れ覗く　　欅並木の　　帰る人　　　一水

歩道

収用の　　歩道造りし　　梅雨はれま　　　一水

健診

健診に　　背の縮みおり　　夕明り　　　一水

乾く土

乾く土　　蟻の一列　　みみず牽く　　　一水

甘納豆

三つ指で　甘納豆を　　少女食べ　　　一水

水撒き

水撒きの　　助かりし朝　　梅雨はれま　　　一水

新ビル

新ビルの　　予算足りずに　　五月晴れ　　　一水

防虫

防虫の　　散布終わりて　　さるすべり　　　一水

鳥の名

鳥の名を　　教え違いて　　電話来る　　　一水

健診

健診に　　背丈は縮み　　竹の雪　　　一水

巣作り

松揺れて　　巣作り終え　　夫婦鳩　　　一水

力つけたり

水切りで　　力つけたり　　百合を挿す　　　一水

蟻

空梅雨に　　蟻の一列　　みみず牽く　　　一水

蟻

空梅雨に　　蟻の一列　　みみず牽く　　　一水

藪枯らし

藪枯らし　　根こそぎ抜かる　　夏の朝　　　一水

赤百合

赤百合の　　幸せもたぐ　　風もなく　　　一水

風ぬける

風ぬける　　欅並木に　　五月晴れ　　　一水

広き空

明け暮れて　　勇気勇気と　　広き空　　　一水

萩

この年は　　芽を出さぬ萩　　弱虫め　　　一水

枇杷もがれ

枇杷もがれ　　鳥の分だけ　　二つ三つ　　　一水

雷鳴

雷鳴に　　マーク置き去り　　避雷針　　　一水

稲光

稲光　　遠くに見えて　　時雨かな　　　一水

雌蕊

六弁の　　雌蕊妖艶　　百合の花　　　一水

百合の花

純白の　　わが手より大き　　百合の花　　　一水

芽吹き

つわぶきの　　芽吹き多くて　　ふさぐ路　　　一水

汗はじく

夕刊を　　配達する子　　汗はじく　　　一水

夏が来て

夏が来て　　きんもくせいの　　枝払う　　　一水

月朗々

われを見る　　月朗々と　　宙描き　　　一水

りんご箱

りんご箱　　詰まる青春　　櫻桃忌　　　一水

月見草

この年は　　ことさらに咲き　　月見草　　　一水

はえ叩き

五月蝿　　空を打ちおる　　はえ叩き　　　一水

雷鳴

雷鳴す　　成すべきことは　　山のごと　　　一水

雨近し

妻の言う　　土の匂いあり　　雨近し　　　一水